世界で通じる英語
はじめに
日本においても国際化がさらに進められている現代において、国際語としての英語と、その教育はますます重要になってきています。
ところが、みなさまご存じのとおり、日本は先進諸国の中でも、そしてそうでない国々を含めた中でも英語のしゃべれない国として有名です、大変不名誉ながら。
単純には比較できませんが、例えばTOEICスコアを見てみると、欧米や南米にはもちろん、中国や韓国にも負けています。
TOEIC: Publications (2015 Reports on Test Takers Worldwide)
多くの国で、専門書や最新の情報にアクセスするにもビジネスでするにも、英語の読み書きや会話の能力が必須である中、母国語だけでも十二分に生活できる日本という国は稀有であり、英語教育を強く推すよりも、むしろ母国語で緻密な思考ができるようになることが先だろう、という意見もあります。
その意見にも賛成ですが、個人的には、やはり国際語としての英語によるコミュニケーション能力の獲得により得られる体験や情報の、その人の世界観や視野を進化させる可能性は、他の教育では簡単に匹敵できないほど大きいと思います。
ので、どちらかというと英語教育推進派です。
ただ現代の日本の英語教育は、やはり入試英語としての性格が非常に強く、国際的な場での実践にはあまり向いていないタイプの英語が教えられていると思われます。
そこで、国際学会や執筆、留学の経験から、日本の英語教育、ないし個人的な英語の勉強について、不肖アキラから少しばかりのご提案をいたします。
1. British Englishの方が向いている?
日本語同様、英語にもなまりがあります。
いささか乱暴ですが、英語のなまりを大別すると、アメリカン・アクセント(American English)と、イギリス風のブリティッシュ・アクセント(British English)の2種類があります。
英会話教室やALTの先生たちが北米の人たちが多かったせいか、アキラはこてこてのAmerican Englishを話します(海外に行くと『アキラはきれいなAmericanを話すね』と言われるのが、ちょっと自慢)。
実際の学校教育の英語も、Americanの方が多いように思われます。
ですが世界的に見るとBritish Englishの方が好まれているように思われます。
考えらる理由としては、
1) 少し食い気味や粗暴に聞こえるAmericanよりも、Britishの方が端正に聞こえる。
2) 一般的にBritish風の英語の方が、英語圏以外の外国人にも聞き取りやすい。(実際にはBritishの中にも方言があり、その中にはまるで宇宙語のようなものもありますが…)
などがあります。
日本人にとっても、BritishではAmericanほど"R"で舌を巻かないので、もはや"R"と"L"を無理に発音し分けなくてもいい、といった利点もあります。
また、これは好みもありますが、Americanのように"リズム"をそこまではっきり作らなくてもいいという利点もあります。
(個人的には、Americanはリズムに慣れると、舌が回りやすくなって口で覚えやすいと思っていますが。)
以上のことから、英語圏の言葉としてよりも、国際語として英語を使いたいのであれば、British Englishの方が有利にはたらくかと考えられます。
2. まずはフレーズの蓄積を
同様の状況に置かれた際に、英語と日本語で使われる言葉は全く異なります。
「日本語で"How are you?"はなんていうの?」と外国人からよく聞かれますが、いつも答えに困ります。
もちろん、「調子はどう?」とか訳してもいいのですが、それは日本において "Hello" の後でいつでも使えるようなフレーズではなく、そもそもそれに相当するような一般化されたフレーズが存在しないからです。
つまりこの差は、単純には訳し難い、もっと根本的な言語運用の違いであり、要するに言い回しの違いであるからです。
日本語にも英語にもそれぞれ特有の語彙や語感があり、ゆえに「これを表現したい際にはこの単語とこの単語を、こういう風につなげる」といった感じの「言い回し」があります。
書き言葉ももちろん、話し言葉においては特にこういったよくある言い回しからあまり離れすぎると話が通じなくなるのはどの言語も同じです。
日本人の英文は、文法的には正しそうだけど、あまり聞かない感じの言い回しの、どうも日本語を無理やり直しているようなちぐはぐな文章になる傾向がある気がします。
難しい英文に慣れている人や英語圏の人たちには通じるかもしれませんが、それ以外の外国人には通じにくいでしょう。
やはりその根底には、文法や構文に大きく重きを置く日本の英語教育のためだと思われます。
アキラにも、中学・高校の授業で難解な文法や構文をひたすら覚えさせられた記憶があります。
(もちろん、高度な文章を組み立てるのには文法や構文の深い理解が必要です。)
ある程度英語を勉強をされた方には、日本語と英語の直訳はナンセンスということは自明でしょう。
"Do you mind passing the salt?" を言葉のまま日本語に訳してしまうと「あなたは塩を渡すことを気にしますか?」にしかなりません。
文法ありきの組み立てではなく、フレーズありきの語句の入れ替えの方がわかりやすい英語になると思われます。
3. 発音は大切
インターナショナルな場になればなるほど、いろんななまりの英語を聞くことになります。
そしてもちろん、強いなまりほど聞き手は話し手の内容の理解が厳しくなります。
国際学会で、"COPD (シーオーピーディ、慢性閉塞性肺疾患)" を「チャオペデ」と発音するようなものすごいなまりのアジア人の発表を聞いたことがありますが、やはりその内容を理解できた観客が少なかったためか、質問をする人はほぼいませんでした。
でもそのとき、「あ~、日本人のカタカナ英語って、外国人にはこんな感じにきこえているんだな」と実感しました。
日本人もちゃんと話せないと世界で相手にされないんだろうな、と。
また、自分の口で作れない音は、相手の口で作られても聞き取れない可能性が高いでしょう。
現代の学校教育の現場では、発音や話すことに関して熱を入れる教師は多くないように思われます。
というのも、入試英語ではほとんど筆記のみか、多くてもリスニングの力くらいしか問われませんので。
発音の練習に関しては、今ではYouTubeをはじめとして様々なところで教材を見つけることができます。
簡単なフレーズをまるごと真似して何度も発音して、口を慣らしていくといいでしょう。
実際のところ、British風に発音したいのであれば、リズムと子音を少し意識して話せばそれっぽくなるはずです。
4. 英語にも敬語表現はある
一般人だけでなく英語教師の中にも、英語には敬語がないと勘違いしている人は多いでしょう。
確かに日本語のようにはっきりと語形の変わる単語は多くはありませんが、むしろだからこそ英語における婉曲表現はとてもセンシティブです。
国際的な場で、国内でそれなりのポジションに就いて縦社会に慣れ切ってしまった日本人が、"You should...", "You have to...", "You must..." と言う姿を度々見かけますが、大変無礼な表現で、自身の立場を誤解しているととらえられかねません。
米国・英国では高いポジションにあるほど余裕を見せられるとエレガントだと考えられているようで、"If there is any suggesttion, it may be better to...", "According to the data, it may be possible that..." といたような、婉曲な表現で、それでいて客観的・建設的な意見を添えて発言がなされる印象を受けます。
おわりに
英語をより国際語として使うためのアイディアをいくつか書いてみました。
- British Englishの方が、日本人にとっても、そして国際語としても向いている。
- 文法ベースではなく、フレーズベースの英文の組み立てを。
- 英語らしい発音の練習も大切。
- 敬語的な表現でエレガントな英語を。
世界で活躍している、もしくはこれから活躍するみなさんにとって、少しでも参考になればうれしい限りです。
アキラ